さまざまな製品やサービスを利用する際の簡単な質問を解決するFAQですが、チャットボット(chatbot)が導入されるケースが増えています。
チャットボットはコンピューターが自動的に質問に回答するため、問い合わせ業務担当者の負担軽減や顧客満足度の向上といったメリットのほかに、FAQの解決率向上にも効果的と期待されています。
本記事では、チャットボットが本当にFAQの解決率を向上させるのか、その理由と解決率向上のためのポイントについて解説します。
目次
FAQチャットボット導入は問い合わせ対応業務の効率化が期待できる
FAQは「Frequently Asked Question」の頭文字をとった言葉で、日本語では「頻繁に尋ねられる質問=よくある質問」という意味です。
FAQによって多くの人が疑問に思う内容を効率的に解決できます。想定される質問の数が多く、内容も多岐にわたる場合はシステム化するケースが一般的です。
チャットボットはチャットに送信されたメッセージをコンピューターが解析し、適切な返答を自動的に行うツールです。
FAQにチャットボットを導入すれば、利用者はまるで人とやりとりするように会話形式で質問し、返答が得られるでしょう。
チャットボットは従来のFAQシステムより気軽に利用でき、FAQで見つかりにくい「お問合せフォーム」などで個々に送られてくる質問に対応する業務も軽減・効率化が期待できます。
FAQには、問い合わせ対応業務の負担軽減と顧客満足度の向上という大きなメリットがありますが、チャットボット導入によってそのメリットがさらに大きくなるでしょう。
チャットボットはFAQやシナリオの量によってタイプが異なる
チャットボット(chatbot)をFAQに導入する場合、事前準備に必要なFAQの量によって適したタイプが異なります。
チャットボット利用にはFAQにそったシナリオ設定が不可欠ですから、まずはFAQの整理からはじめて、必要な量を確認しましょう。
FAQやシナリオの量が少ない場合はAI非搭載型、多い場合はAI搭載型のチャットボットがおすすめです。
FAQチャットボットの活用事例
ここではFAQチャットボット活用が有効な事例について解説します。
1. 顧客対応
顧客対応にFAQチャットボットは有効です。
自社のWEBサイトのトップページ、SNSの公式アカウントなど顧客がコンタクトしやすい場所にFAQチャットボットを設置します。
顧客自身が操作することで、カスタマーサポートの有人対応件数が削減され、人件費などのコスト削減にも一定の効果が期待できます。
また、顧客側にとっても24時間365日質問ができるため便利です。
チャットボット導入によって、1日で数百件あった電話問い合わせを40%削減できたうえ、電話がつながらないと言う顧客の不満緩和につながったケースもあります。
また、資料請求や料金に関する質問などをチャットボットで気軽に問い合わせ可能にすれば、新規マーケティングにも有効です。
2. コールセンターのオペレーター向け
一般社団法人日本コールセンター協会が行なった調査では、チャットボットをチャネルとして提供している企業は、2020年度で42.0%となっています。2018年度と比較すると2.4%上昇しており、多くの企業がチャットボットを導入していることがわかります。(※1)
ただし、顧客向けにFAQチャットボットがあっても、コールセンターへの問い合わせはあります。
その際、オペレーターによって対応や回答内容が異なった場合、トラブルにつながりかねません。
コールセンターにかかってきた問い合わせ電話に対して、誰が対応しても同じ解答ができるようにFAQシステムを導入すれば、コールセンター内の対応マニュアルやノウハウの統一が図れます。
また、顧客向けチャットボットと連携することによる相乗効果も期待できます。
チャットボット上のやりとりを記録したログを参照することで、顧客も一から説明し直さずにすみ、オペレーターも状況の把握がしやすく、1件あたりの対応時間や問題解決率の改善につながります。
コールセンターの応答率が30%から100%に上昇したケースもあります。
(※1)一般社団法人日本コールセンター協会『2020年度 コールセンター企業 実態調査』 報告(2022.05.30)
3. 社内ヘルプデスク
業務に関するヘルプデスクとして、社内用のFAQチャットボットを導入する使い方もあります。
各種手続きの申請方法や経費精算について、業務システムの使用方法、人事規定など、担当者が同じような質問を何度も答えるような場面は少なくないでしょう。
そこにチャットボットを導入することで、担当者が一つひとつ対応する必要はなくなり、質問する側も気になった時すぐに問い合わせができるようになります。
また、賞与の基準や昇格、評価制度など人には聞きづらかった内容でもチャットボットなら気軽に調べられるといった事例もあります。
導入前に把握すべきFAQチャットボットの失敗例
FAQチャットボットは業務の効率化に大いに寄与しますが、その一方で効率化につながらないケースもあります。FAQチャットボット導入を成功させるために、事前に失敗例を把握しておきましょう。
1. 社内用FAQチャットボットが活用されない
社内用としてFAQチャットボットを導入したにも関わらず、時間が経つにつれ利用頻度が減ってしまい形骸化してしまうケースがあります。
このようなケースで考えられるのが、回答選択肢の多さによる精度と使いやすさの低下です。選択肢は3~5つほどに収めて、設定した選択肢で回答しきれない場合は電話対応やメール対応に切り替える工夫が必要です。
2. FAQチャットボットを導入したにも関わらず利用されない
FAQチャットボットを導入したにも関わらず電話での問い合わせが減らない場合、以下のような理由が考えられます。
● FAQチャットボットまでの導線が分かりづらい
● 利用方法の説明が分かりづらい
特に高齢者がユーザーの場合は、FAQチャットボットの説明が不親切では利用されない可能性があります。そのため、FAQチャットボットを利用するユーザーの分析が大切です。例えば高齢者を対象するのであれば、チラシやパンフレットといった媒体にQRコードを掲載しておき、チャットボットの利用を促しましょう。
チャットボットでFAQの解決率を向上させる5つのポイント
チャットボット(chatbot)には、AI搭載型とAI非搭載型が存在し、FAQ解決率を向上させる方法が異なります。
チャットボットを導入する際は、FAQ解決率の向上につながる以下のポイントを押さえておきましょう。
1. ニーズの高い質問項目から集中的に取り組む(AI非搭載型)
AIを搭載しないシナリオ型のチャットボットでは、元データとなるシナリオがFAQユーザーのニーズに対して適切であることが重要になります。
シナリオ型のチャットボットでFAQの解決率を上げるには、登録する情報量を増やすことが必須です。
従来のFAQのアクセス状況から、頻出ワードやよく見られている質問内容を確認し、FAQで答えやすい項目から集中的に取り組みましょう。
質問内容に優先度を決めて取り組むことで、チャットボット導入の際の事前学習やチューニングの手間が抑えられます。
2. 利用者の動線は徐々に増やす(AI型)
AI型のチャットボットは、運用しながらデータを蓄積・学習して回答制度を高めます。
最初から精度の高い回答を提示するのは難しいケースもあるでしょう。
顧客に「不便」「あまり役に立たない」などといった認識を与えては意味がありません。
チャットボットの精度が十分に活用可能なレベルに達するまでは、利用者の動線を抑え気味にするのも有効です。
チャットボットの制度が向上したら、お問い合わせ用の電話番号の表示をなくすなどチャットボットへの動線を徐々に増やしていきましょう。
社内向けのチャットボットでは、チャットボットが十分に機能できても「電話で聞く方が早いから」と問い合わせが減らない可能性があります。
社内で周知を徹底したり、時間・曜日によって電話問い合わせを停止するなどの方法でチャットボット利用が浸透するような工夫も必要です。
また、解決率や回答率の結果を定期的に確認し、質問内容の変更・追加などもおこないましょう。
3. チャットボット表示の回数・タイミングを確認(AI型・AI非搭載型)
FAQの解決率を向上させるには、チャットボットの起動回数や問い合わせ対応件数の測定と改善も必要です。
起動回数が少ない、起動後のチャットボット対応件数が伸びていない場合、ポップアップのタイミングに問題があるかもしれません。
WEBサイト閲覧中のポップアップの表示方法やタイミングを変更することで、チャットボット対応率が上がり、解決率向上につながる可能性があります。
4. 新しい情報の収集(AI型・AI非搭載型)
時間が経てばFAQの内容も変化していきます。
問い合わせの内容をこまめに確認し、最近増えてきた質問があれば、チャットボットにも追加します。
チャットボットの運用では、質問者のニーズを反映した情報の充実を図ってください。
また、AI型の場合はFAQ作成候補やFAQ改善候補を自動提案する機能が含まれているケースもあるため、そちらを活用するのもおすすめです。
5. 有人対応との連携をスムーズに(AI型・AI非搭載型)
どんなに優秀なチャットボットでも、全ての問い合わせに対応するのは困難です。
FAQチャットボットで解決できない場合は、有人対応が必要となるでしょう。
その際、FAQチャットボットと担当者の連携が重要です。
両者の連携がスムーズであれば、業務効率や生産性、利用者の利便性の向上が期待できます。