CASE
導入事例
株式会社星野リゾート
マーケティンググループ ディレクター
鈴木 貴大 様
鈴木様
現在、お客さまからのお問い合わせは、沖縄にある予約センターが対応しています。予約センターを立ち上げた当時は施設がそんなに多くなかったのですが、今後弊社の施設が加速度的に増えていく見込みがあります。そうなった時、施設が増えるたびに予約センターのスタッフを増やし、オフィスの面積を増やし…ということを本当にやっていくのだろうかという懸念がありました。お問い合わせ対応をもっと効率的に行っていきたいという課題は潜在的にありました。
予約センターがマーケティンググループの所属に組織変更されたタイミングで、予約センターの生産性やお客さまの利便性をもっと高められないかといった将来像をメンバーと議論しました。今は、顧客が使いたい手段で問い合わせをし、自分の都合が良いタイミングで回答を得たいという時代。文字型のコミュニケーションが若い方を中心にシェアが高まっていて、若い人はもう電話をしたくないというマーケットデータも参考にしました。お客さまとのコミュニケーションの手段は、電話とメールだけではなくて、リアルタイムに文字でやりとりできるツールを導入したほうがいいのではないかと、そんな議論がきっかけで、チャットの導入を検討し始めました。
鈴木様
5社は検討しました。ChatPlusを選んだ一番の理由は、私たちが要望する機能要件をちゃんと満たしているということ。また、費用もリーズナブルで、手軽でさっと始められるというところが大きかったです。
検討した他社の1つはAI自体を自社で作っていらっしゃるところでした。その会社AIにこだわりがあったのですが、私たち自身、AIにまだ不慣れなところもあったので、ハードルが高いかなと感じました。また、オムニチャネルのプラットフォームを提供されている会社のチャットツールも検討しました。コールセンター自体の仕組みを全部変えましょうという大きな構想の中で、1つの手段としてチャットがありますよという提案で、電話からSMS(メッセージ)へ行ったり、SMSからチャットに行ったり、そこからまた電話に戻ってきたり、トータルで顧客の体験価値を高めていきましょうという提案でした。けれども、そもそも私たちはチャットボットやAIと向き合ったことがなくて、いきなり大きな構想から入るのではなくて、まずは私たちがまだ持っていないAIチャットボットに特化して、自分たちで体験・熟成することから始めようという話になって、ChatPlusを選定することに決定しました。
鈴木様
星野リゾートの「界」というブラント17施設の施設サイトに、ChatPlusのAIチャットボットを設置して、お客さまからのご質問に自動で回答しています。プロジェクトリーダーが私で、予約センターの主にメール対応を行っている在宅スタッフ5人がチャット担当という体制で運用しています。5人のうち必ず1人が1日専任でチャットボットの対応を行っており、AIのナレッジデータベースをメンテナンスする作業と、チャットの有人対応を担当しています。
私たちはChatPlusを導入する際に、2段階でステップアップさせていこうと考えました。まず第1段階は、チャットボットを導入することで、お客さまの利便性を高め、お問い合わせ対応の効率化を図るということ。星野リゾートの全ブランド、全施設にチャットボットを展開し、お客さまの「知りたい」すべてに、しっかりと答えていくことが目標です。
その先の第2段階に、チャットボット上で、星野リゾートのコンセプトでもある「旅を楽しくする」ご提案ができないか…と構想しています。例えば、「この施設へクルマで行きます。駐車場はありますか?」というお問い合わせをいただいた時に「駐車場はあります」と回答するのは当たり前なのですが、プラスアルファで「最寄りのサービスエリアの〇〇がおいしいので、ぜひ食べてみてください」とちょっと気の利いたご提案があれば、お客さまの旅を楽しくすることができるのではないかと思っています。
鈴木様
AIは、チャットボットの精度を上げていく1つの手段だと考えています。お客さまは自分が知りたい項目があればすぐにボタンを押します。その精度をさらに高めるにはAIが必要ですし、AIは私たちが想像していないお客さまのニーズが見つかりやすいと思います。AIという手段でお客さまのニーズをいち早く把握したいと考えています。
正直、私たちはAIがどういう可能性を秘めているものなのか、手探りの状態です。ただAIの可能性が分かった段階で参入していくと活用が後手に回ってしまうので、早めに始めよう、と考えました。
鈴木様
電話、メール、チャットボットの利用数をトータルした総問い合わせ数に対し、チャットボットの利用は、現在、全体の約3割です。この数値は当初想定したより、かなり多く利用していただいているという印象です。
先日「界」の全17施設に設置が完了しました。オープンしたばかりの施設もあり電話がすごく込み合っていたので、「只今電話が込み合っています。ホームページ上のチャットでもお問い合わせが可能です」とアナウンスが流れるようにした途端に、チャットボットの利用率がどんどん上がっていきました。また、予約を入れていただいた方へのお礼の自動メールにも「チャットでのお問い合わせが可能です」と入れてみたり、施設サイトのファーストビューでチャットが出るようにしたり。デイリーでいろいろ工夫していったら、利用率がどんどん上がっていきました。予約状況を見ても総問い合わせ数は1~2カ月前とそう変わっていないはずなので、おそらく電話の負荷が下がっています。これはすばらしい効果だと思います。チャットボットの利用率向上が業務の効率化につながっているということが見える化できました。
AIの正答率も、毎日学習させるようにしてからは上がってきており、今80%ぐらいです。またホームページ訪問者がどのぐらいチャットを起動しているのかという数字は、約2.5%。チャットを起動した人の中でちゃんと利用してくださっている方が、だいたい50%ぐらいです。2%と50%というのが目安で、概ね想定どおりです。こういった集計も簡単に出せるというのは、ChatPlusの非常に良いところだと思います。
また最近、チャットボットの最後に、満足度のアンケートを追加しました。データを取り始めて間もないのですが、答えた方の7~8割が「役に立ちました」とおっしゃっていただいています。AIの正答率80%とチャット満足度80%をチームの目標に設定しています。
鈴木様
はい。私たちが実現したいことを週1回のミーティングでお伝えし、ずっと寄り添って併走していただいたので、導入時の苦労はなかったですね。具体的な作業の時もサポートしてくださいました。逆に、サポートが手厚すぎて、私たちが自立するのはいつなのだろうと、それを考えていました(笑)。最終的には、サポートなしで私たちだけでぐるぐる回していけたほうが早いし、それが理想の姿だと思っています。「界」の全施設に導入してからは自立しているのですが、また次のブランドへ展開する時にサポートをお願いするかと思います。
また、ユーザーの声をどんどん吸い上げて機能を積み上げていっているのは、すばらしいと思います。知らないうちに便利な機能が追加されて、細かいところまでできるようになる。これは要望しても実現できるのかな?ということを、断らずに「機能追加の優先順位があるので少し時間かかるかもしれませんが、対応できるかもしれないので相談します」とおっしゃっていただける。このように返答していただけるツールは、他にはないです。
鈴木様
星野リゾートの国内全施設へ展開することがまずは目標です。プロジェクトメンバーの中では、もう全施設に入れたい、次のブランドへ取り掛かりたいというモードになっているのですが、もう少し私たちの中で、熟成させ、ちゃんとお客さまが満足しているのかというのを確認した上で、横展開していこうとメンバーには話しています。満足度80%とAI正答率80%のデータがこの1カ月で揃ったら、早めに代表へ報告して、次のブランドへ行かせてくださいと話すつもりです。
「旅を楽しくする」提案をチャットボットにも搭載するという第2段階へのチャレンジも進めていきます。星野リゾートには、いろいろな「旅を楽しくする」ネタを持っている現地スタッフがとてもたくさんいます。それが個人の中で眠っているのがもったいないので、ある程度リスト化して、設計を行い、自動応答でやっていくことができたら、すばらしいなと思っています。例えば、「ペットが泊まれますか?」というお問い合わせをいただいた時に、「ペットは泊まれません」で終わるのではなく「ご希望の日に、ペットと泊まれる施設は全国にこれだけあります」と案内ができるように。ひと言、気の利いた「おせっかい」をチャットボット上でできたら、お客さまの旅はもっと楽しくなるのではないだろうかという想いがあります。
鈴木様
現在コロナ禍にあって、私たちの会社がどう世の中のためになっていくのかということを考え、議論しました。議論を経て出た1つの答えが、旅というのは、「心のワクチン」になるのではないかということ。私自身、この答えがとてもしっくりきますし、社内でも合言葉のようになっています。「旅は心のワクチン」であるということを私たちは信じて、お客さまの日々の生活において、コロナ禍でも楽しく生きていける、そのお手伝いをしていきたいと思っています。
室内での人の密度、距離、空気循環に配慮の上、お話をお伺いしました。また、写真撮影時だけマスクをはずしています。