顧客などの問い合わせに対し、自動で答えを返してくれるチャットボット。
24時間いつでも対応できることや、さまざまな業務の効率化を見込めることなどから、自社の業務やサイトに使用している企業も多いのですが、場合によっては導入に失敗する可能性もあります。
せっかくチャットボットを導入するのなら、下準備をしっかり整え、業務に賢く活用しましょう。
今回は、チャットボット導入の失敗事例と、そこから学べる成功のポイントをご紹介します。
目次
チャットボット導入の失敗事例5選
チャットボットを導入したけれど、思ったように運用できなかったというケースは決して少なくありません。何が原因で失敗するのか、どんなことに注意しなければならないのか知るためにも、チャットボット導入の失敗事例をあらかじめチェックしておきましょう。
ここでは、チャットボット導入の際にありがちな失敗事例を5つご紹介します。
事例1. チャットボットのリリースに失敗
A社では、同業他社のB社がコーポレートサイトでチャットボットを活用しているのを知り、負けじと自社サイトでのチャットボット導入を決定しました。
チャットボットを実際の業務で活用するには、ニーズや目的に合ったデータを登録する必要がありますが、B社にならって導入を決めただけのA社には、チャットボットを利用して何をしたいのか、どんな効果を望んでいるのか、明確なビジョンがありません。
結局、自社に合ったチャットボットを開発することができず、リリースは途中で頓挫してしまいました。
こうした失敗例は、チャットボットの導入そのものを目的としている場合に起こりやすい傾向にあります。
事例2. 使い勝手が悪く、クレームが入る
C社は自社商品へのQ&Aを自動化できるチャットボットをリリースしました。
しかし、導入直後から「的外れな答えが返ってくる」「いつまでも回答が表示されない」といったクレームが顧客から殺到してしまいます。C社では、Q&Aの自動化によって業務効率化を目指していましたが、クレーム対応が増えたおかげで、かえって業務が増える結果になってしまいました。
チャットボットの回答精度が落ちる原因のほとんどは、十分にテスト運用を行わなずにリリースすることで、短期間で無理やり導入しようとすると失敗する確率が高くなります。
事例3. コールセンターへの問い合わせが減らない
BtoCを主体としているD社には、毎日たくさんの問い合わせがコールセンターに殺到します。
問い合わせの内容はごく簡単なものが多く、必ずしもオペレーターの対応が必要なものではなかったため、簡易的な受け答えはチャットボットに任せることにしました。
リリース直後からチャットボットは問題なく稼働していましたが、コールセンターへの入電量はなぜかリリース前とほとんど変わりません。原因を追求したところ、チャットボットを利用しているのは主に若年層で、コールセンター利用率の高いシニア層はほとんど活用していないことがわかりました。
このように、コールセンターの利用者層と、チャットボットの利用者層が重複しないケースでは、チャットボットを導入しても期待していた効果を得られない可能性があります。
事例4. チャットボットの利用率が時間と共に低下する
E社では、自社サイトに消費者向けのチャットボットを導入しました。
当初はチャットボットの利用率が順調に伸び、一定の効果を上げているように思われましたが、導入から半年後の稼働率をチェックしたところ、リリース直後と比べて利用率が大幅に低下していることが判明しました。
チャットボットには運用費がかかるため、利用率が低下すると、費用対効果も下がって損失を招くおそれがあります。
事例5. 経営層からチャットボットの打ち切りを命じられた
F社では、顧客からの問い合わせ対応業務が多く、本来の業務に支障を来していることを理由に、チャットボットの導入を経営層に提案しました。提案は可決され、チャットボットの運用により、現場の業務効率がぐっとアップしました。
ところが運用から1年が経過した頃、経営層から「費用対効果が疑わしい」ことを理由に、チャットボットの運用停止を命じられてしまいました。
現場ではチャットボットの利便性を実感できていても、経営層との認識にズレがあると、運用が打ち切られてしまう場合があります。
チャットボット導入で成功するための5つのポイント
チャットボット導入でよくある失敗事例を踏まえ、成功するために押さえておきたいポイントを5つご紹介します。
1. チャットボットの導入目的を明確にする
チャットボットを導入する目的は企業によって異なり、「自社サイトへの問い合わせ対応を自動化したい」という企業もあれば、「社内ヘルプデスクの負担を軽減したい」という企業もあります。
前者の場合は、顧客から寄せられるよくある質問を。後者の場合は社内からの問い合わせ内容をそれぞれピックアップし、的確な回答データを登録する必要があります。
まずはチャットボットをなぜ導入するのか、どんなシーンで活用したいのかを明確にし、チャットボット構築の指針を決めておくと、現場にニーズに合ったチャットボットをリリースすることができます。
チャットボットの導入目的は、自社が抱える課題から見つかるケースが多いので、現場からの声にしっかり耳を傾けて、正確なニーズを把握するところから始めてみましょう。
2. チャットボットに期待できる効果をシミュレーションする
いくら高性能なチャットボットを構築しても、本当に使ってもらいたいターゲットに利用されなければ、十分な費用対効果を得ることはできません。
「失敗事例2」はその典型例で、ネットに不慣れなシニア層をチャットボットに誘導するのは難しく、「コールセンターの問い合わせ量を減らす」という当初の目的を達成できない可能性があります。
チャットボットのリリースを検討する際は、期待できる効果をあらかじめシミュレーションし、自分たちの求める成果をあげられるかどうかをしっかりチェックすることが大切です。
なお、シミュレーションの結果、費用対効果が薄いと推測される場合でも、別の角度から見ると思わぬメリットを得られることもあります。
たとえば「失敗事例2」のケースでは、チャットボットを導入することで、普段コールセンターを利用しない若年層を取り込みやすくなります。
当初の目的は長い目で取り組みつつ、当面は新たな顧客の取り込みに活用すれば、十分な費用対効果を期待できるでしょう。
3. リリース前に十分なテストを行う
どんなに入念に準備を重ねてきたつもりでも、いざ稼働してみたら想定外のエラーが頻発した…というケースは決してめずらしくありません。リリースを焦るあまり、ろくにテストチェックせずにチャットボットを導入してしまうと、利用者から苦情が殺到する原因となります。
一度「使いづらい」と判断されると二度と利用してもらえませんので、リリース前のテストは十分に行い、実用できる水準に達しているかどうかをしっかり確認しましょう。
何度もトライ&エラーを繰り返せば、システムがブラッシュアップされ、回答精度の高いチャットボットをリリースできるようになります。
4. 定期的にメンテナンスを実施する
チャットボットのリリースに満足してしまい、その後のメンテナンスを怠ると、利用率低下の原因となります。
リリース当初は多くの人が試しに使うので利用率は上昇しますが、継続的に使ってもらうためには、「利用者が回答に満足しているか」「想定外のエラーが起こっていないか」などを定期的にチェックし、必要に応じて適切に対処しなければなりません。
チャットボットはリリース後も、プログラムの更新によってシステムをアップデートできるので、こまめにメンテナンスを行うようにしましょう。
チャットボット終了後、簡単な利用者アンケートを表示するなど、利用者の声をフィードバックできる体制を整えていると、メンテナンスの参考になります。
5. チャットボットの効果を測定する
チャットボットの運用にはそれなりのコストがかかりますので、投資に見合う効果を得られているかどうか、定期的にチェックする必要があります。
チャットボットを導入することによって営業時間外の問い合わせがどのくらい増えたか。コールセンターの稼働率にどのくらいの変化が現れたかをデータとして残しておくと、チャットボットの導入によって得られた効果を可視化できます。
成果を目に見える形で提示できれば、経営層の評価も得やすくなりますし、今後の修正・見直しにも役立ちます。
チャットボットツールの選び方
チャットボットの機能やシステムは、ツールによって大きく異なります。
ここでは、チャットボットツールを選ぶときのポイントを2つご紹介します。
1. 効果・成果をデータとして残せるか
チャットボット導入によって得られた効果をチェックするには、「どのような質問が行われているか」「どのボタンが何回くらい押されているか」などのデータを確認する必要があります。
どんなデータをどのような形で残せるかはツールによって異なりますが、より高性能なチャットボットに仕上げたい場合は、さまざまな角度から効果・成果を確認できる機能が備わっているツールを選ぶのがおすすめです。
2. サポート体制が整っているかどうか
初めてチャットボットを導入するのなら、わからないことやトラブルがあった際、迅速に対応してくれるサポート体制の整ったツールを選ぶのがポイントです。
導入前でも相談に乗ってくれるかどうか、休日でも対応してくれるかどうかなど、サポートの充実さもしっかりチェックしておきましょう。
ベンダーによっては、チャットボット初心者向けに、運用相談会やセミナーなどを開催しているところもあります。
チャットボット導入失敗の原因を知ることが成功へのカギ
チャットボットは業務効率化に役立つ便利なシステムですが、目的がはっきりしないうちに導入したり、テストチェックを怠ったりすると、思うような効果を得られない可能性があります。
こうした失敗の原因を踏まえ、導入目的を明確にする、入念にテストする、定期的に効果を検証するなどの工夫をこらし、賢いチャットボットの運用を目指しましょう。
チャットボットの導入に関するよくある質問
- チャットボットツールの選び方のポイントはありますか?
- 効果や成果をデータとして残し、導入後に改善が出来るかやサポート体制が整っているかを確認する事が大切です。
- チャットボット導入後に失敗を防ぐ方法はありますか?
- 導入目的に合わせたチャットボットのツールを選ぶことや、導入前にテストで実際に触ってみる事が大切です。